産業医の仕事

職場巡視

危険作業などのチェックや労働環境改善のためのアドバイスを行います

月1回工場または職場を巡回し危険作業や有害業務があれば(事前に現場から情報をいただいてます)適正な管理がなされていることの確認をします。また作業姿勢や重量物の運搬に無理がないか等もチェックすることになります。

安全衛生委員会への参加

単に参加するだけでは時間の無駄です。健康管理情報を提供し管理側から従業員への浸透を図ります。特に広域感染症対策には有効です。

健康診断の結果フォロー

一般健診ではなかなか癌の早期発見は難しい側面があります。生活習慣病を中心に家族歴(重要な遺伝子情報です)などを参考に必要な人には強力に飲酒・喫煙の停止を勧めます。健診機関との綿密な打ち合わせが必要です。特殊健診では有所見者には徹底して原因の追求を行います。業務起因性が明らかになったら会社に対して改善方法を提示し実行していただきます。

長時間勤務対策

産業医によって考えはいろいろあるでしょうが私には過労死を防止することが健康管理の究極の目的であり私が産業医になった理由でもあります。その意味で勤務時間は一つの要因です。この勤務時間を正確に産業医に伝えない、または伝える努力を怠ると世間から強烈な批判を受け一流企業のブランドは崩れ落ちます。そういう意味で企業の収益規模が大きく安定していることは一流の必要条件で、健康管理がしっかりしていることが十分条件ではないでしょうか。

私が専属・嘱託で勤務していたほとんどの企業ではトップ・経営陣が勤務時間の重要性を認識されていました。また人事・総務は正確な勤務情報を私に渡していただけましたし、見逃しがあった場合は改善を速やかに行っていただけました。もちろん現在契約している企業は十分な対策を講じています。

健康管理の目的は過労死を防ぐこと

私は必ずしも無条件に長時間勤務を抑制する提言はしません。若い従業員で開発・研究である期間集中的に徹夜徹夜の連続がある場合など、産業医は月に1回面談することによって危険であると判断した場合はもちろん減速を勧めますが、そうでない場合は「さあ、頑張ってください」と励ましてまいりました。私が以前技術者として勤務していたころの経験では実験が面白くて月に150時間の残業は珍しくありませんでした。大事なことは如何に上司がその仕事の重要性を部下に説明して皆が前向きに仕事をしているかということです。

しかし40歳を超えるとさすがにリスクは高くなります。自覚症状・他覚所見等正常でも可能な限り休暇の取得をお勧めしています。

メンタル対策

危険作業などのチェックや労働環境改善のためのアドバイスを行います

過負荷、不良な人間関係、仕事の非適性など業務起因性ストレスがうつ病の発症を促します。現代の企業にとって従業員のメンタルケアは必須となっており、大きく予防、早期発見、早期治療、治療中の管理、復職への導入などに分けられますが予防はかなり困難を伴います。長時間勤務対策でも述べましたがいくら前向きに仕事をしてもらおうとしても、管理職自体がノルマで厳しい状況にありますので部下に十分な配慮ができないという現状があります。

また成人してからストレス耐性を高めようとしても著しい向上は望めません。ある程度の基礎力は入社時点で決定されています。即ち予防策としては管理職には人間的にふさわしい(良好な人間関係を築ける)人になってもらい、従業員の適性を的確に判断し適した仕事をしてもらうことが考えられます。人間関係は最重要であると考えます。

早期発見に関しては現場での気づきは先ず大事ですが、早期ということになるとなかなか難しいです。ここでは質問(アンケート)が数少ないスクリーニング方法になるのですが、1年に1〜2回程度の健診時におけるアンケートではなかなか漏れを防ぐことが出来ません。1カ月あれば十分うつ病になってしまいます。

そこで1カ月に1回睡眠障害に限って10問程度のアンケートをとる(月1ではあまり数の多い質問は回答自体がストレスになってしまいます)ことを提案しています。定型うつ病の90%以上に睡眠障害が認められます。もちろんはるかに多い他の病気でも睡眠障害が認められますが、それはそれで吸い上げてしまいます。中にはアンケートは重症な人ほど大丈夫と言ってしまうから意味がないという意見がありますがここでは重症な方は現場で、または長時間面談などで気づくことができます。

アンケートではふだんなかなか手をあげることができない人をすくい上げることが目的となります。EAPにすべて任せるという発想は安易に過ぎます。

長期休職者に対する復職支援

長期にわたり病気を理由に休職されていた方が復職を希望する際、復職が可能か否か面接にて判断します。中には休職が許されている期限の間際になって十分回復していないにもかかわらず無理をして復職希望を提出される方がいますが、そこで無理をして復職した方でそのあと無事に勤務継続ができた人を私は知りません。たとえその会社を辞めることになっても病気を治したほうがその後の長い人生を考えた上ではるかに有益であることは間違いありません。

産業医としては一時的に恨まれることがあっても正確な情報をご本人に伝えることが大事であると考えます。

広域感染症対策の実施

最近のインフルエンザ対策でも解るように、系統だった対策を会社に示すことにより大きな感染の広がりを食い止めることができます。

障害者雇用対策

ほとんどの企業は障害者を雇用していますが適正な業務内容になっているか、また過負荷になっていなかなどの安全配慮を十分行っているかのチェックを行います。

健康教育

新入社員、新任管理職、経営陣などに対する健康教育は産業医のコア業務です。特に経営陣に対して健康教育ができている企業は効果的な健康管理がなされていると考えてよいでしょう。企業の中は民主主義ではありません。トップダウンが極めて有効であることは(日本では)説明を要しません。